注:
スタンフォードブリッジをホームとするチェルシーFC(Chelsea Football Club)はフットボールリーグ1の1954-55年シーズン優勝クラブである。そしてこれが当クラブが20世紀に獲得した唯一のリーグ優勝であった。
「シーヤ・リータ」での3人の部屋はオーシャンビューのコテージ。2階からはテムズ川河口に絶え間なく行き交う商船が眺められた。インテリアはビクトリア朝と植民地時代の趣を合わせた雰囲気で、明るい色の壁紙を背に、出所の知れない肖像画――恐らく10ポンド程度の三流作品――が掛かっていた。
一人で窓から海岸を眺めていた青年は、このいたずらな世の中になんとも言い難い感覚を覚えずにはいられなかった。
この短い期間に興味深い人たちにたくさん出会い、そして誰一人として素性は知らないものの――その誰もが誠実な人たちばかりであった。
だからこそ、それぞれにどうしようもない立場があることも웰트にはわかっていた。エジソンは北米支部の中心人物。プランクは支部と本部の潤滑油の役割――もちろん、贔屓があるのも明らかだが。そして、リアーナは「命令に服従することを天職とする」軍人だ。
もしも将来、北米支部と本部の間で長年溜まっていた不満が爆発したとしたら、明確な立場のない人間……自分や아인슈타인、테슬라のようなごく普通の研究者は、一体どう振舞えばいいのだろう。
絵画から取り出した魂鋼の中で、「H.A」と名乗る謎の人物は天命組織をひどく恨んでいるようだった。一体彼女は何を見、何を経験したのだろう。あのパスワードのかかったデータをエイダが解読した時、自分たちは一体どう向き合うべきなのだろう?아인슈타인と테슬라は「調査研究しないものに発言権はない」と信じているが――瞬きをする間にすべてが変わってしまうこの世の中で、彼女たちに十分な時間は残されているのだろうか?
注:
ヨーロッパ復興計画(European Recovery Program)はマーシャルプラン(The Marshall Plan)とも言われ、第二次世界大戦後アメリカが戦争で大きな被害を受けた西ヨーロッパ(NATO)各国に対し行った経済援助、復興協力。その計画を通じて、西欧各国は様々な形で合計130億ドル(インフレを考慮し現在の価値に換算すると、当時の額面の10倍以上に相当)の援助を受けた。
注:
『ダニーボーイ』(Danny Boy)はイングランドのフレデリック・ウェザリー(Frederic Weatherly )の作詞。民謡『ロンドンデリーの歌』(Londonderry Air)に合わせて歌われる。その意味については、愛情を表したものとも、死者を悼むものとも、出征した息子を思う父の心情を歌ったものなど、様々な説がある。