少女は急ぎもゆっくりもせず、包みを開けた。伝家の宝剣を取り出し、細かく観察する。 古剣 - 軒轅。 剣の長さは二尺一寸。剣身は金色で、両側に刃があり、暗灰色の模様が描かれている。 材質不明で、精鉄でも鋼でもないが、重さは感じられず、切れ味も良い。その鋭利さと硬さは世の名剣に匹敵する。 母親はこの剣を彼女に渡した時、こう忠告した。

「この剣は師匠が残したもので、私の大事な伝家の宝物でもある。

きちんと仕舞って、何があっても剣を手放しちゃだめよ。」

「『太虚剣気』の本当の秘密は内功でも技でもなく、この剣の中にある。

剣意を習得したら、母さんの言ってることが分かるはず。」

秦素衣は少女の頬を優しくつねって、それからまた、話を続ける。 「……もし習得できなかったとしても、大丈夫よ。[\s]剣意は難しい。私たち七人の中では、あなたの師匠だけが意蘊を習得できなかった。しかし武術の造詣で、彼女に勝る者はいないわ。」 母親は急にため息をついた。 「凌霜姉さんは淡泊な人で、利益のことなんて考えない……でももう、十数年が過ぎている。人は変わるものよ。」

「素裳、軒轅剣を彼女に渡しちゃだめ、たとえ彼女がそう命令したとしてもね。[\s]

もし聞かれたら、私がそう言ったって伝えなさい。」

素裳は大騒ぎした。いざ大漠に着いた後は、泣き真似もしてみたが、すぐに好奇心が勝り、師匠に質問し始めた。

子供は隠し事ができない。そんなに話してもいないうちに、軒轅剣のことを口にした。

そして母親の予想通り、師匠はあの軒轅剣を渡すように言ってきた。[\s]

正直者の素裳はしばらく考えて、最後は両手で古剣を差し出した。

さすがに師匠は5歳の女の子をいじめて、ものを奪ったりしないでしょう?[\s]

軒轅を渡した瞬間、少女はなぜか新しい服を見せびらかすような気分になった。

「……」 師匠は軒轅剣を膝の上に置き、黙ったまま切先を優しく撫でていたが、しばらくしてやっと口を開く。 「これが七番弟子の『墨染香』?」

七番弟子……素裳は呆気にとられたが、すぐに母親が師匠と同じ門派の出身で、七番弟子であることを思い出した。[\s]

『墨染香』は母親が使っていた軒轅剣の名前である。

師匠に言われ、少女は今まで母親の武術、そして武器を使っているところを見たことがないと思い出す。 「分からない、たぶんそうだと思う。母さんは伝家の宝物だって言ってた。」 「ふむ……伝家の。」 師匠は冷たく返事して、再び視線を膝の上にある宝剣に戻す。細い指が剣刃を優しく弾く。 素裳はぽかんとした。宝剣が空を舞う姿が見えたのだ。 それはゆっくり、ゆっくりと上がっていき、そして、止まる。 日差しが金色の剣身を照らした。変わった模様に吸収されたかのように、それは空中で七色の光を放つ。 「わぁ……」 素裳は、その景色に心を奪われた。 よく考えてみれば、剣が空を舞って落ちる姿など、一秒前後の光景に過ぎない。

しかし素裳にとっては、無限のように長い一秒だった。[\s]

幼い頃から剣と共に生きてきた彼女であったが、今まで、剣がこれほど美しいものだと知らなかった。

その減速されたかのような時間の中で、軒轅は輝きを纏い、ゆっくりと落ちていく。[\s]

そして彼女の目の前に落下し、剣身は、音一つなく地面に刺さった。

師匠は立ち上がり、袖の埃を払いながらこう言った。 「明日から、剣心の修行をしてもらう。剣心が終わった後は剣形の修行だ。剣形を習得した後であれば、この剣を持っても良い。」

思い出の中の素裳が、プッと吹き出した。[\s]

今の彼女には、この軒轅を使う資格がある。

手の中の宝剣を観察した素裳は、ふと遊び心に駆られた。

理性が邪魔するよりも先に、本能が率先して行動に移す。[\s]

少女は宝剣を撫で、それからあの時の師匠のように、切先を指で弾いた。

宝剣は空を舞い、風を切り、金の光が眩しく輝き出す。 ——次の瞬間、軒轅が天井に当たり、地面に落ちた。 「……まずい。」 穴蔵の門が突然開けられ、上から光が差し込んだ。一人の人間が階段から降りてくる。 相手は周りの雑音に目を向けることなく、真っ直ぐに彼女の前へと向かってくる。 李素裳は相手のことを知っている。 「ごめん、手が滑って……大丈夫だよね?うるさかった?」 相手は鉄格子越しに彼女を見ながら、突如凶悪な笑顔を見せた。 「首領がお前に会いたいと言ってる。」 「あちゃー……やっぱり。」 李素裳はため息をつく。自分が裏切られたことに気が付いたのだ。