疲労と痛みが怒涛のように押し寄せる。まるで、再び体の支配権を取り戻したことを少女に知らせているかのようだった。[\s]

……ただ、その知らせ方はあまりにも残酷だった。

「イタタ……」

少女の口の中に、しょっぱい血の味が広がる。人生を疑うほどの苦みを伴っていた。[\s]

内臓が破裂したとかじゃないよね?

……剣に斬られた腹部から急に痛みを感じるようになった。

武術の修行には怪我や病気がつきものだが、

これほどの重傷は少女にとって初めてのことだった。

[em italic color=#FAFAD2]これが勝利の味だとしたら……

本当にほろ苦いんだね。[/em][\s]

李素裳はあれこれ考えているうちに、思わず吹き出して笑った。

そしてまたもや痛みで顔をしかめた。

「ちょっと、羅刹人……いるんでしょ?」 少女はやっとの思いで声をあげ、空の月に向かって尋ねた。

返事はなく、ただ足音がコツ、コツと聞こえるだけだった。[\s]

コツ、コツ。[\s]

遠くから近くへ、誰かが歩いてきた。

「エヘヘ……あんたでしょ?」

李素裳が問う。

その声はとても小さく、耳元のガサガサという音のせいで、自分でもよく聞こえぬほどだった。

「あんたが手を貸してくれたの?」 「喋らないで。」 金髪碧眼の羅刹人は、彼女の横で片膝をついた。 「……運が良かった。傷は酷くない。」

[em italic color=#FAFAD2]これでも酷くないっていうの?[/em]

李素裳は聞こうとしたが、あえて心の中に留めておいた。

彼女は静かに仰向けになりながら、整った顔立ちの羅刹人をチラッと見た。彼がまた何かをするのではないかと気になったのだ。 彼女の予想通り、羅刹人が手のひらを広げると、虚空から金色と青色の光が流れ出し、奇妙な物体を形作った。

素裳の目には、その物体は不思議な花模様が描かれた真っ白な紙の傘のように見えた。

傘はとても長く、先端は尖っており、とても鋭利だった。

「それでアタシを突っつくの?」 「喋らないで。」 羅刹人は再び言った。 垂れ下がった長い髪の毛が彼の目を覆っている。素裳は、汗とも涙とも分からぬ水滴が男の顔から滴り落ちるのを見た。[\s]羅刹人は漆黒の傘の柄を持ち、傘の先端を素裳の腹部の傷に押し当て、彼女の方に顔を向けて言った。

「痛くはない。でも、少し変な感じがするだろうね……

だるかったり、痺れたりするかもしれないが、じっとしていられるかい?」

素裳は頷こうとしたが、傷口を動かしたことによって激痛が走る。彼女は目を瞬かせるしかなかった。 「……あんたを信じるよ。」 彼女自身も自分が言ったのかどうか、分からなかった。 傘の先端が触れた部分から、繰り返し波打つような痛みが徐々に和らいでいった。[\s]剣心で見ていた素裳は、羅刹人が真気をその傘に注ぎ続けているということを把握する。 これは、とてつもなく負担が大きい。彼の顔には滝のような汗が流れていた。

[em italic color=#FAFAD2]金髪の人って、汗も金色なのかな?[/em]

李素裳は考えながら、心の中の3割が後悔、3割が喜び、3割が恥ずかしさで埋まる。残りの1割は彼に対する申し訳なさだった。

「似たようなものだが、性能は全然違うな……」 羅刹人が独り言のように言った。 「少し時間がかかるよ。」 「うん。」 羅刹人はそれ以上言わず、李素裳も口を閉ざした。

夜の風が優しく吹き抜け、羅刹人の長い金髪をなびかせる。

髪の毛が顔をかすめ、微かにくすぐったく感じた。

李素裳はそのことを口に出そうと思ったが、言いたくないとも考えた。

彼女は思い切って目を閉じる。[\s]

羅刹人の言ったように、体のあちこちが痺れたり、痛くなったりしていくのを感じた。不思議な感覚だが、我慢できるものだった。

「あ~あ。」 李素裳は波乱に満ちた一日を思い返す。 まず金砂会の四人の手下を倒し、次に囚人の気分を体験した。 「鷹」と呼ばれる男と武術の試合をしたが、勝つのはとても難しかった。 金砂会の首領に重傷を負わせたが、自分も深手を負ってしまった。 そしてこの不思議な外国人と出会い、彼が妖術で自分の傷を癒してくれている様子を見ている。 [em italic color=#FAFAD2]本当に長い一日だったな……[/em]

生と死の境を経験した少女は、天の裂け目を飛び越えたかのような気分だった。

今朝の自分のことを思い返すと、一昔前のような気がした。

満足感と虚しさ、楽しさと悲しさ。

李素裳の心の中では、何とも言えない感情が交錯していた。

いつの間にか、痛みは徐々に消えていった。[\s]

素裳の心の中に、成長したという小さな誇りが満ち溢れていく。

「ねえ、あんた……神州の掟を知らないと、後で困ったことになるよ。」 李素裳は空の月を見上げながら、小さな声で言った。 「ここでは手合わせの最中、部外者は手を出しちゃいけないの。[\s]さっき、もし見物人がいたら、武術界の道義に反する外道だって言われたはずだよ。あんたはよそ者なんだから、自分から問題を起こさないようにね。」 「分かった。僕は手を出さない。君が殺されるのを見ていてもいいということだね。」 「エヘヘ……」 「ありがとう。あんたは悪い羅刹人じゃないね。あんたは……いい人だよ。」 「フッ。」 羅刹人は彼女には目を向けず、彼女の傷を癒すためにその白い傘に真気を注ぎ続けている。 「礼には及ばないさ。僕も君にお願いしたいことがあるからね。」 「えっ?何?」 少女は急に興味を持った。 「教えて、教えてよ。アタシの命を救ってくれたんだもの。どんなことだって精一杯やってみせるよ。」 「先ほど地下で、君の武術は太虚剣気という、精衛仙人の秘伝の奇術だって言っただろう?」 羅刹人は臆することなく尋ねた。 「それは誰だい?どうして仙人って呼ばれているんだ?」 「本物の仙人様だからだよ。際限なく秘術を使うの。聞いた話だと、彼女は不老不死で、何千年も生きているのに、少女の姿のままなんだって。」 羅刹人は気持ちを落ち着かせた。手に持っていた白い傘が急に跡形もなく消える。 「彼女がどこにいるか知っているかい?」 「アタシが?知らないよ。」 李素裳は得意げに言った。 「だけど、アタシに聞いたのは正解だね。この世で仙人の行方を知っている人がいるとすれば、それはアタシの師匠だけだもの。」 「知ってる?精衛真人には全部で七人の弟子がいたの。師匠とアタシの母さんは、どっちも彼女の弟子なんだ……」 「って、どうしたの?仙人に会いたいの?」 「……」 羅刹人は彼女をしっかりと見つめ、急に笑顔を見せた。 「ああ。」 彼自身も気付いていなかったが、西域から神州大陸に来て以来、これほど気を緩めて、これほど自然に、これほど自由に笑ったのは初めてだった。 李素裳は彼の過去も、彼の苦痛も知らない。ただこの羅刹人が、今はとても明るく笑っていることだけは分かった。[\s]ある種の衝動に駆られた少女は、何も考えずに、また考える暇もなく、一気に飛び起きた。 「じゃあアタシと一緒に来て!一緒に師匠に会いに行って、仙人に会わせてもらおう!」 伝記更新:「羅刹人」