夜風が吹き、銀色の月が高く昇っている。 月明りに照らされ、一つの影ができる。さらに揺らめくロウソクの火に照らされ、二つ目の影がその上に重なった。 影がねじ曲がり、様々な形へと変わっていく。その姿はとても滑稽に見えた。 一方、影の主人たちは微動だにしなかった。 少女は左手に剣を持っているかのような構えをし、右手で拳を握った。これこそ太虚啓剣形の最初の構え、「残月」だった。[\s]そして彼女は、一撃目は李家「垂燕十三式」の第六式「雨燕双帰」に決めていた。 少女は堂々と背筋を伸ばし、人生初となる正式な他流試合を楽しんでいる。

揺らめくロウソクの光が夜の闇の中で幼い少女を照らし、彼女の姿を実際よりもはるかに大きく見せていた。

一方、正面の男はかすかに前かがみになり、背中、両足、両腕を曲げていた。[\s]

この構えは河東駱氏に伝わる奥義「虎吼震九霄」だ。

武術界の人間がこの場にいれば、金砂会の首領がどうして河東門派の武術を習得しているのか不思議に思ったことだろう。[\s]しかし、武術界のことについてほぼ何も知らない少女は、そんなことを知る由もない。

男と少女は向かい合って立ち、微動だにしないまま互いに探り合っている。

今夜の月明かりのような沈黙が小さな中庭を包み込んでいた。

東洋人が決闘する前は、いつもこのような静寂が訪れるのだろうか?

……

二人とも、相手の隙を窺っている。

しかし、三人目の人物はやや痺れを切らしていた。

「神州人の考え方というものは……」 その人物は、手の中で小さな十字架を弄んでいる。 「理解するには、まだまだ時間がかかる。」 彼は十字架を宙に放り投げ、それが霧のように消えていくのを見ていた。 ——それと同時に、急に少女が攻撃を仕掛けた。 長いこと向き合い続け、ついに「鷹」が隙を見せたのだ。 隙はほんの一瞬だった。彼の呼吸がほんのわずかに乱れたのだ。

その一瞬、真気の動きが滞り、虎吼の構えも消えたのだった。

(——しまった!) 「……!」 李素裳はその隙を見逃すことなく、飛びかかった——! ——柔勁の拳は風のように、寸勁の掌は雷のように繰り出される!

パンッ![\s]

平手打ちの音が鳴り響いた。

「鷹」はよろめきながら後ずさりする。口元からは血が流れていた。 彼は何度か唾を吐いた。塩辛く苦い液体が、砕けた歯とともに石畳に叩きつけられる。 「これは1発目の平手打ちだからね。」 少女はニコニコしながら言った。 「2発目もお返しするから気をつけてね。」 「…………」

「鷹」は怒りが収まらなかった。

気の動かし方を誤り、ほんの一瞬だけ真気を失ってしまったところに、少女の平手打ちを食らってしまったのだ。

大した被害を受けてはいないものの、この失態によって彼は面目を失ったと感じていた。

ただし、李素裳はまだ本気を出していないようである。

このことで、「変数」に対する自信が増した。それと同時に、屈辱感も倍増した。

彼は長いこと「虎吼功」を使っていなかった。久しぶりに使ってみたが、やはり錆びついているようだ。[\s]

敵は気を抜いて勝てる相手ではない。同じ過ちは絶対に繰り返せなかった。

「もう1回だよ!」 素裳は再び「驚燕払簾」を使い、瞬く間に姿を消した。

二人は空中で三つの技を繰り出した。

力は拮抗しており、どちらも優位に立てなかった。

少女は優雅に着地すると、再び「啓剣・残月」を繰り出した。

虎の咆哮が空を飛ぶ燕を驚かせる。[\s]

河東駱家の虎吼震九霄はかねてから勇ましいことで有名であり、

垂燕十三式は軽快かつ変幻自在で、どちらにもそれぞれの強みがあった。[\s]

しかし、実力では勝っているはずの少女は「鷹」を相手に互角がやっとだった。

このこと自体が、信じられないような躓きだった。

(……どうして?)

「鷹」は賭けに勝った。

戦いが始まった時から、李素裳は真気を使うことができなかった。

彼女が家伝の垂燕十三式の後に太虚啓剣形を続けたのは、

まさにそのことを確かめるためだったのだ。

(あの薬はアタシに効いていないはずなのに……)

内功の強さで言えば、自在門の「太虚剣気」は天下一だろう。

神州の各派にはそれぞれ独自の心法がある。しかし、形式は変われど本質は変わらず、結局は鍛錬次第なのだ。

真気を水に例えると、通常の内功は水を入れる器を鍛え、容量を増やしていくようなものだ。[\s]

過酷な鍛錬を繰り返さなくてはならないばかりか、上達も非常に遅い。そして何より、人体に大きな負担をかける恐れがある。

一方の「太虚剣気」は、他の功法とは本質的に異なっている。[\s]

「剣心」は「容器」ではなく、「桟道」を鍛える。

天地万物から真気を吸い取り、内功を体の中で小川の水のように自由自在に流れさせるのだ。

この新しい方法は、太虚一脈の祖師である精衛真人が作り出した。

奥深く不思議なものだったが、非常に大きな制約もあった。

例えば、男性が太虚剣気を鍛錬した場合、大多数が途中で挫折し、上達できなくなる。類まれな才能を持つ少年でもない限り、この奇功を習得するのは不可能なのだ。

一方、女性が太虚剣気を鍛錬した場合、わずかな労力で大きな成果が得られる。

平凡な才能の持ち主でも、男性の手練れに勝てるほどの強さを手にすることができるのだ。

素裳の師匠は、歴代最強の剣心と言われ、内功だけに限れば、世界の誰にも負けないほどだった。

その彼女が教えた少女も、並外れた腕前を持っている。

しかし、今は、内功が封じられている状況だ—— 重い拳が連続して少女に襲いかかる。 人並外れた反射神経と直感力のおかげで、李素裳は「鷹」の攻撃を一つ一つ避け、防ぎ、凌いでいた。 (こいつの武術は侮れない……

だけど、それでも勝つのは、アタシ。)

これまで戦った金砂会の手下たちは、力任せに武器を振り回すだけだったが、「鷹」は違う。この男は拳の使い方だけではなく、真気を使って拳勁を強化する方法も知っている。明らかに非凡な内功の使い手だ。

しかし、真気を使えなくても、少女にはまだ絶対的な強みがあった。

剣心を鍛錬した肉体の強度は、常人をはるかに凌駕しているのだ。

そして剣形は、世界で最も奥の深い武術である。

「守剣・垂柳」!

大男は雨のように重い拳を繰り出すが、李素裳は一式の守剣形だけでほとんど防ぎ切った。

しかし、それでも虎吼の拳は休むことなく襲いかかってくる。まるで荒れ狂った波風が絶えず打ちつけるかのようだ。少女はゆっくり後ずさりした。手で剣を持つような構えを取り、柔勁で鋼拳を凌いでいく。 (ちょっと……この鷹って奴、疲れを知らないの?) 「ほう。」

金砂会の首領はまったく疲れていないかのようだった。

柳のように伸びやかな少女の柔勁に尽く拳を阻まれながらも、

一瞬たりとも攻撃の手を緩めなかった。

洪水のような拳の影が李素裳に襲いかかる。 体を守るための内勁がない今、この重い一撃を受ければ、体は枯れ枝のように簡単に折れてしまうだろう。 (いや、守剣の形に隙はない。) そんな考えが李素裳の頭をかすめたが、波紋を立てることもなく、すぐさま消し去られた。

(拳は大体見切った。六式の守剣で余裕だ。

…それにしてもこいつ、こんなに力を無駄遣いしていれば、自ずと衰えていくはずなのに。)

こんな簡単な理屈を「鷹」が分かっていないはずはない。[\s]

しかし、彼はどうして変わらず猛攻を続けるのだろうか?

(まったく。もう少し待とう……) 内功を失うという制約の中で、李素裳は不用意に手を出すのを躊躇っていた。 彼女は機会を窺いながら、[\s]隙ができるのを待っていた。