夜は更けていたが、「鷹」はまったく眠っていなかった。 古い宿場の広間には明かりが灯っており、建物の外の中庭は、火の光と暗闇によって二つに分かれていた。 「鷹」は中庭に立っていた。最も信頼する八人の部下が、傍らで彼の剣舞を見ている。 「鷹」は剣客ではなく、剣術の造詣も深くはない。彼は元々軍人であり、習得したのは刀術だった。

剣と刀は似ているように見えるが、まったくの別物だ。

「剣は軽やかに、刀は力強く」と言うように、剣が変幻自在の素早い動きをするのに対し、刀は直線的な動きで力を使って相手を倒す。

剣術を習得した者が刀を扱うと、剣術のような動きになる。その逆もまた然りだ。

そのため、「鷹」は剣舞を披露しているが、実のところは刀舞だった。

彼がこのようなことをしているのも、宝剣が手に入って嬉しかったからに他ならない。

彼はこれほど見事な武器を見たことがなかった。

「鷹」は剣を持ち、軽快に走った。突如、手首を軽く回して剣花の舞を3回披露した。 まるで、墨をつけた筆だった。剣先が移動することによって、ほの暗い筋が空中に残る。書道の筆遣いのようだ。

これは剣筋の美しさを示している。まさに完璧そのものだ。

「鷹」は剣を素早く突き出し、急に手首の力加減を変えた。剣身は動かず、剣先がかすかに震えて、ヒュンヒュンと音を立てている。

これは剣身のしなやかさを示している。剛と柔を兼ね備えているのだ。

剣が止まって見えるほど、勢いを落とす。刃は胸の横に当てられ、圧倒的なまでに冷たく鋭い光を放っている。

これは剣の光の強さを示している。骨に突き刺さるほど冷たい光だ。

「鷹」は思わず高笑いした。髪の毛を1本抜いて、剣の刃の上に置く。手を放すと、髪の毛は両断された。 これは剣の刃の鋭さを示している。息を吹きかけるだけで髪の毛を両断するのだ。 これら4つの特性を兼ね備えたこの剣は、まさに比類なき神器と言えるだろう。 「素晴らしい、素晴らしいぞ……」 「鷹」は呟くように言った。

「鷹」は決して、剣を愛でたり集めたりするような人間ではない。

彼が剣のことを褒めたとしても、それは山賊が戦利品を評価するようなものでしかなかった。

目利きの者が少女のこの剣を見れば、大金をはたいたとしても手に入れようとするだろう。 しかし、彼は武術家だ。 古来より名剣は美しい玉のようなもので、手に入れた者は必ずそれを身につけるのが習わしだ。 「鷹」はこの剣を自分のもとに置いておくことにした。金銀財宝とは関係ない。自分の地位を示すためだった。 自分のような人物が、地位に見合うだけの武器を持つのは当然のことだ。 金砂会の首領は李素裳の『軒轅』をしげしげと見つめる。見れば見るほど、この剣を気に入るようになった。 「あんた、そんなにアタシの剣が気に入ったの?」 「!!!!!」 「鷹」は驚きのあまり、本能的に6尺ほど離れた場所まで飛び退く。

彼の目の前には信じられない光景が広がっていた。[\s]

8人の手下がいつの間にか地面に倒れ、気を失っていたのだ。

そして、彼が自ら牢屋に閉じ込めるように命令したはずの少女が、目を瞬かせながら彼を見ていた。[\s]

[em italic]どういうことだ!?!?[/em]

……もしこれが何かの冗談であれば、首謀者を八つ裂きにして馬の餌にしていただろう。 しかし、少女は臆することなく、彼の方に手を伸ばした。 「ほら、もう十分でしょ。そろそろ返して。」 「……ふざけたことを抜かすな!」 「鷹」は動揺していたが、少女のその言葉によって怒りに火がついた。 彼はこうした理解不能な状況に陥ることを嫌っており、再び状況の主導権を奪おうとする。 「……どうやって逃げ出したんだ?」 「あぁ、羅刹人が手伝ってくれて……あれ、あの人は?」 少女はキョロキョロと周囲を見回した。 (※※、おのれ、羅刹人め!)

「鷹」は心の中で自分をひどく罵った。[\s]

『災い』だと気付いた時、すぐに始末しておけばよかったのだ。

皆が災いを恐れるからこそ、災いは問題を生じさせる。[\s]

「鷹」はあの羅刹の変人を軽んじたことを後悔した。しかし、今となっては後悔しても後の祭りだ。

彼は静かに後ずさりし、安全な会話の距離を保とうとした。しかし、剣を手にしているのは彼の方だ。本来なら必要のないことである。[\s]

……しかし、「鷹」が最も心配しているのは少女ではなかった。

この時、月は明るく、星はまばらだった。揺らめくロウソクの炎に照らされた影が、石畳の上で踊り続けている。問題を解決するには絶好の機会だった。 「あの羅刹人は?……あいつはどこだ?」 「知らないよ。」 少女の言葉は本当だった。彼女には嘘をつくという概念がないようだ。 「さっきまで後ろにいたのに、急にいなくなっちゃった。」 それは彼にとって、まさしく最悪の答えだった。[\s]実のところ、「鷹」は目の前の少女のことはまったく気にしていなかった。[\s]相手の武術がどれほど優れていようと、これほど馬鹿正直な子供に負けるはずはない。

彼は最初から例の羅刹人のことを、今宵の最も危険な人物と見なしていた。

そして、その人物の動きをつかめないことによって、彼は自信を大きく失ってしまった。

羅刹人は既に遠くへ逃げているかもしれないし、どこかに身を潜めて機会を伺っているかもしれない——いずれにせよ、彼の心はトゲが引っかかっているような状態であり、取り除くまでは安心できなかった。 「ちょっと。あの人に構うことないよ。今のあんたの相手はアタシでしょ。」 少女は伸ばしていた腕を引っ込め、拱手の礼をした。 「剣は返してもらうよ。自在門の門弟、李素裳。お相手いたす!」 彼女は場にまったくそぐわない言葉を並べ立てると、構えを取った。 「鷹」が動くよりも早く、少女の影は彼の目前に迫っていた。 次の瞬間、彼の前腕に痛みが走り、宝剣が手から落ちた。 「貴様——」 今度は胸に掌打を受けた。 「鷹」は数歩後ろによろめき、慌てて気を集中させて呼吸を整えようとしたが、体内の臓器はまだ波打つように揺れており、落ち着かせることができなかった。 「……おのれ!」

その掌打は内功を使っておらず、重くはあったが、内臓を傷つけるほどではなかった。

しかし、少女の軽功の妙技は、「鷹」も見たことがないほどだった。

驚きと怒りのあまり、羅刹人の存在を忘れる。

「鷹」は、この十幾つかの相手を改めて見定めることにした。