「鷹」は喜び、驚き、そして怒りを覚えた。 部下が騒ぎを起こしたネズミを捕らえたと知って、喜びを感じた。

『侵入者』がまさかの小娘だと聞いた時、驚きを覚えた。

少女の姿を見た時、「鷹」は怒りに震えた。 彼が手塩にかけて育てた兵士が、10代の小娘にあんな風にボコボコにされただと!?

なんという侮辱だ!!!

怒りのあまり、衝撃すら感じた。 「鷹」は一歩前へ出る。目の前の少女を観察し、心の中が疑問で溢れた。 この小娘は何者だ!?

この漠北で、金砂会を恐れぬ者はいない。

官兵の精鋭でも、遠くて頑丈な金砂会を恐れ、衝突を避けている。

一体誰が、身の程知らずにも自らやってきて、この「鷹」を敵に回すというのだ?

彼には分からなかった。 更に——来たのは小娘だ。歳は高くとも16くらいだろう。子供っぽさがまだ残っていて、その眼差しからは少年のような心意気を感じる。 更に——彼女の武術は悪くない、むしろ驚くほど優れていた。「鷹」の自慢の部下が一斉にかかっても、彼女を捕らえることはできなかったという。 この小娘は一体何者だ!? 「鷹」はそう訊ねたかった。

しかし予想外にも、先に口を開いたのは彼ではなかった。

「あんたが『鷹』なの?へえ、想像していたのとちが——」 「鷹」は手を上げて少女に平手打ちを食わせ、少女の言葉を塞ぐ。

彼の縄張りでは、彼が先に口を開き、彼が先に質問するのが鉄則である。

少女は顔を上げた。口元に血が流れている。 彼女は信じられないといった表情で「鷹」を見上げる。涙目になっていた。 「あんた……アタシを殴った?母さんにも——」 「鷹」はまた少女に平手打ちを食らわす。今回は力が入っていて、素裳はあやうく床に足をつけるところだった。 「……今度、捕虜を連れ帰った時は、口を塞いでおけ。」 「はい、首領。」

「鷹」は手を拭い、少女の前にしゃがむ。

少女もまた彼を見ていた。その視線に恐れの色はなく、あるのは強情と怒りのみだ。

「鷹」は彼女の顎を掴み、ゆっくりと話す。

「お前が誰だか知らないし、その目的も知らない。

最初は、興味があったらお前の目的を聞いてやってもいいと思った。

もし俺を笑わせられるなら、大目に見てやってもいいとさえ思ったんだが。」

「……今、お前にそういう機会はやってこない。」 「鷹」は涙で濡れた少女の両目をじっと見つめながら、敵に制裁を与える快感を楽しむ。これは本来の彼のやり方ではないが、あの羅刹人と出会ってから、気分が晴れないままだった。 威嚇と恫喝に意味はないと知りつつも、彼は話を続ける。

「次は、自分が口を開いてもいい時機を覚えろ。

口を慎め。主人に気に入られるためにも、自分の命を守るためにも。

将来お前が日々付き合うだろう人間は、俺のように優しくはないからな。」

「お前はまだ幼い、顔も悪くない。調教すればきっと気に入ってもらえるだろう。正直に言えば、俺はお前をいい値段で売り捌くつもりだ。あと数日は安全だろうが、あまり調子に乗るな。」 「バイホイの奴隷商人がお前を連れ去った後、きっとお前は今日俺に殺されなかったことを後悔するだろう。俺が保証する。」

「思い切り後悔して、許しを乞えばいい……お前は死ぬまでそうする運命だからな。

俺の金砂会を挑発したやつは、その結末からは逃げられない。」

そう言って、「鷹」は捕虜を一目見て、満足する結果を得ようとしたが、また失望する。

少女は鼻をすすり、大人しく頷き、一言も口にしなかった。

様々な反応の中で、こういう態度が一番彼の逆鱗に触れる。

「鷹」は素裳を突き飛ばした。不快感を表すかのように服で手を拭い、横にいる部下を見る。 「何を考えている?」 突如聞かれた男はビックリした。汗だくになり、言葉もうまく発することができない 。

「さっきからお前は落ち着かない様子だった。

……言いたいことがあるんだろう?言え。」

「は、はい……こ、この娘は手強いです……用心したほうがいいかと……」 「鷹」が嫌悪した表情で部下をちらりと見ると、相手は驚いて一歩下がった。 「お前たち、彼女に『截気散』を飲ませたんだな。」 「は……はい、抵抗はされませんでした。その……首領に不利なことをするんじゃないかって、心配で。」 「十代の娘が、手枷で束縛されて、内功も使えない。」 「……そんな相手が、俺に不利なことをすると思うのか?」 「申し訳ありませんでした!」

男は気が動転して、慌てて跪く。

首領の口調が穏やかであればあるほど、怒り心頭の状態にあるということを、知っているからだ。

「……」 「鷹」は腹を立ててはいるが、顔色ひとつ変えていない。それは彼が長年培った習慣である。 羅刹人を見ると、気分が晴れない。小娘を見ると怒りが湧いてくる。そして部下の勝手な真似は、権威が損なわれたと彼に思わせた。 「あの娘を……地下牢に入れておけ。あの羅刹人と共にな。」 「食料は与えるな、バイホイの人間が来るまで飢えさせるんだ。」 「はい!」 衆人は一斉に呼応し、少女を引き摺り、暗い地下牢に入れるため連れ去った。 「……ん?」

先程跪いた男は、まだその場にいる。

頭を伏せ、顔を上げていないが、体の震えは彼の緊張を物語っている。

「まだ何か言いたいことがあるのか?」 男は罪を赦免されたかのように体をまっすぐに伸ばし、少し興奮した笑みを見せる。 「首領に献上したい宝物があります。どうか、これでお許しを。」 そう言って、彼は手品をするかのように包みを取り出し、両手で差し出す。 「鷹」は受け取ることなく、包みに視線を向けぬまま、質問した。 「中身は?どこで手に入れた?」 「鉄をも簡単に削れる宝剣、あの小娘から奪ったものです。」 「……」 「鷹」は依然として受け取らない。 男も宝物を献上する姿勢のまま、微動だにしない。

しばらくして、「鷹」はふと笑い出した。包みを取って帯を解き、宝剣の本当の姿を見る。[\s]

目の前の男には隠し事も嘘もないということを確認できた。それで十分だ。

「へえ——」 淡い月明かりの下で、宝剣が銀色の光を放つ。 一目見て、その剣が珍しい宝物であることが分かった。