「最高の統治システムは、最も手を加えにくいものである」 外的な要因によって、共和国はその理想に到達できずにいる——世界の向こう側にあるあなたたちの組織も同じかもしれない。 人類が生存するため社会を効率よく回さなければならない時、人は否応なく自分の運命を限られた数の代表者に託さざるを得ない。 お二人が異世界から来たのは、我々の「エーテルアンカー」を調べるためだそうだね。 それはつまり、そちらの目的はこの世界の「生命線」に関わるということだ。 そこで問題だが、お互いにとって「アンカー」の重要性は対等だろうか? ……私は、その答えを持っていません。 私たちの世界では、私の武器にエネルギーを高速充填できるほど崩壊エネルギーが満ちています。 そこには崩壊と平和の明確な境界線がなく、人々は運命を受け入れるしかありません。 私たちの指導者は、「アンカー」の調査はとても価値のあることだと考えています。 ……ですから、私たちは真剣にこの任務に取り組んでいます。 ハハハッ、わざわざ「真剣」って言ったのは、私への当てつけかな? 思い違いですよ。 冗談、冗談。 私は芸術家であり、理想家でもあるんだ。 世界を変えたいと、常々思っている。 だから……一度に二つの世界の運命を変えられるなんて、最高だろ? ビアンカ、あんたはとてもいい子だ。 あんたが出会う人、皆が支え、助けになってくれるだろう。 …… ……ありがとうございます。 コホン。 話を戻そう。共和国を、この世界を助けてくれると約束してくれるなら—— 見返りに、普通の「調査結果」よりももっと価値のあるものを提供する。 ——そう、私が持つこの二つの「デュランダル」の結晶よりも貴重かもしれないものを。 ……詳細を説明する前に、まず結論から言おう。 崩壊の脅威に対抗するために、共和国は長年、根本から世界を救う計画を立てていた。 とても大胆で、完璧な計画だ—— ——ただひとつ、実行できる人間がいないことを除けば。 だが今は違う。運命があなたたちを共和国に出会わせた。 さて、具体的にあなたたちにやってほしいことは—— …… 質問していいですか。 どうぞ。 この計画の成功率は……どのくらいだとお考えですか。 ステップ1は99%——残り1%はあなたの崩壊エネルギー耐性を我々が検証していないからだ。 だがステップ2は……数字にできない。 その時が来たら、すべての準備が無に帰すかもしれない。 そうだとしても——最悪の場合は、事態をある程度収拾できる見込みがある。 「星語者」が減少したことで、我々は長期的な戦略の上で劣勢となったが—— 1453年までに「コンスタンティノープル」がやすやすと陥落したりはしないだろう。 …… わかりました。 ラパヌイ島の「繁栄の結晶」を取り戻してから、返事をします。 正直に教えていただき、ありがとうございます。 ……ふぅ。 ビアンカ様…… あ、リタ。 ごめんなさい、心配させましたか。 …… 議長の計画は大胆すぎます。躊躇うのは当然かと。 まあ、そのことはいいんです。私たちの任務にも差し支えないでしょうし。 え? ただ……ちゃんとできるか心配で。 私たちは、この世界にとって予想外の「Xファクター」です。 私たちが失敗したら、たくさんの人が「世界の終わり」を感じることでしょう。 ああ、そうだね。 でも、翌日になったら、いつも通り酒を飲んで、いつも通り歌を歌うだろうさ。 —— 救世主になろうとしなくていいんだ、お嬢さん。 あんたはパフォーマンスをしているわけでもなければ、誰かを救う約束を果たそうとしているわけでもない——あんたとあんたの武器が、ここの人々に機会を与えた、ただそれだけだ。 世界の命運が変わっても変わらなくても、我々がやったことはただのニュースにしかならない。 コンスタンティノープルの市民たちは、ベリサリウスが旧都ローマを再興したか本当に気にしていたかい?

注釈:

ベリサリウス(Flavius Belisarius, c.500~565)西暦6世紀、東ローマ帝国の名称。「蛮族」に百年近く統治された北アフリカとイタリアを取り戻した。

いや。 人々が気にするのは、せいぜい皇帝ユスティニアヌスが税を増やすか、商船を徴用しないかくらいだ。

注釈:

ユスティニアヌス1世(Flavius Petrus Sabbatius Justinianus, c. 482~565)西暦527~565年に在位した東ローマ帝国(ビザンチウム)の皇帝。(皇后テオドラの補佐の下)失われた国土を多く取り戻し、『ローマ法大全』を編纂、「大帝」や「最後のローマ人」と呼ばれている。

だから気にするな。「人々をどう喜ばせるか」は議長の責任だ、あんたのじゃない。 えっと……でも、本当に私で良かったのか—— それなら、なおさら気楽にいくべきだろうね! 結果的に、この件の選択肢は二つしかない。 議長の計画に参加して、より多くの「アンカー」の情報を入手して帰るか。または誘いを断り、探検を引き上げ、彼女から情報を盗むか。 後者はこの世界にメリットをもたらさない。だが、「君たち」は元の世界のために冒険しているのだろう? ちょっと、どういう意味よ。この子がそんな人間に見えるの? すまない、ちょっと緊張をほぐそうと思っただけだ。 ……そんなものでほぐせるとでも?この「インディアナ」は危ない思想を持ってるわね。 「インディアナ」?未来で流行っているあだ名か何かかい? ふふっ、自分の頭で考えてみなさい。学者のくせに、「三十六計」みたいなことばかり考えているツケよ。 あ、ちなみに、本物の「インディアナ」の方がずっと強いからね。 ……それは申し訳ないね。 まあ…… ……どうするか決めかねてるというより、あの計画に臨む気持ちの整理がしたいんです。 とりあえず出発しましょう。どちらにせよ、ラパヌイ島で青い「繁栄の結晶」を取り戻さないといけないんですから。 ……タダで情報を教えてもらえたわけですし。
——二日後、南太平洋深部。 ……よ。 ラパヌイ島へようこそ。 アタシのことは「カラヴァッジオ」って呼んでくれ。 えっと、こんにちは、カラヴァッジオさん。 事情は聞いた。 山に登ろう。「繁栄の結晶」は山頂付近にある。 カラヴァッジオ様は「繁栄の結晶」を守護する役目の星語者……ということは、その宝石は危険なのでしょうか? いや、危険じゃないさ。 基本的に、人間の生命力を強くする作用しかない。 え?じゃあ、何でこんな辺鄙な小島の中で守られているんですか? ああ、違う違う。 「繁栄の結晶が辺鄙な小島の中で守られている」んじゃなく—— 「繁栄の結晶が辺鄙なラパヌイ島から離れられないから、それをアタシが守っている」んだ。 ……? まあ、見ればわかる。 アタシは元々画家だったんだ。海を渡る赤髪の劇団長のように饒舌じゃない。 ……? 待ってください——もしかして、シェイクスピア船長とお知り合いなんですか? ……さてね。 そんな昔のこと、そちらの船長さんに聞け。 ……? こっちを見るな。私は気の短い画家をいじめた覚えはないぞ。 ハッ、見たか。これがこいつの本性だよ。 アンタら、何か彼女にうやむやにされたことはないか、よく思い出してみろ。 …… ——あ! ……えっ、あ、あるの? 船長、今度ははぐらかされませんよ! 初めて会った時、「デュランダル」をどうやって手に入れたか、なんて説明したか覚えています? 「拾った」? そう、それです!「拾った」って、そんなデタラメな言い分—— 待つっしょ、ビアンカ様。話を遮って申し訳ないけど。 ——何ですか? ……それは本当のことっしょ。偶然、彼女に拾われたっしょ。 ……は? この世界に来た時、シュレーディンガー博士とはぐれたっしょ? ——その時、シェイクスピア船長に拾われたっしょ。 その後は…… う~ん?記録に致命的なシステムエラーがあるみたいっしょ…… おかしいっしょ、ワタシの意識レベル下でそれに関する記憶がないしょ。記憶を失くすほどの深刻なエラーがあったみたいっしょ。 えー…… でしたら、その件はともかくとして…… 本当にこの赤毛チビが……運良く拾ったんですね? うん、それは間違いないっしょ。 ……シュレーディンガー博士とも偶然会ったと? それはわからないっしょ。当時「理性の結晶」を失くしていて、ワタシには記憶がなかったからね。 私が船長を見つけたなのです。 成金よろしく宝剣を持ち歩いていたので——見つかるのも時間の問題だったのです。 …… バカ笑いしながら歩いている姿が、簡単に目に浮かびますね! ハハハハッ、バカになるほど笑うのは私の専売特許だからね? ……どうして、そこで得意げなんですか!? 山道を登り、高度が上がっていく。それにつれて次第に地面の砂化が顕著にひどくなっていった。 「こちらにモアイと呼ばれる石像が何体かあるが、」原住民の衣装をまとった星語者は肩をすくめてこう言った「全部。異世界の模造品だ。」

注釈:

モアイ(Moai)はラパヌイ島(Rapa Nui、旧称イースター島)の名を世界に轟かせた巨大石像である。島には少なくとも887体が存在しており、多くは頭のみだが、肩や腕、体幹があるものもある。未完成のまま遺棄されたものもある。

現在のラパヌイ島は木が少なく、土地の劣化が激しいが、考古学的見地によると、昔は自然が豊かな場所だったそうだ。現地人が無節制に開拓したせいで、繁栄を極めた文明(一度は文字や遠洋航海技術を有した)が徐々に衰退し消滅した。

この国の人々は異世界のものを複製するのが好きだった。議長の言葉を借りるなら—— 「安全や利便性より、贅沢を極めるために金をかけたい」 「我々の家はまるでポストモダン風のようなもので、インドのビーチチェアにトルコのベッド、アラブの天蓋」 「異世界のものをいくつもいくつも自分の家に配置した。それらの本来の用途も知らず、それはダビデ王も引いてしまうことだろう」 ——もちろん、そんなことをのたまっていた頃、彼女はまだ議長じゃなかった。あの頃の彼女は躊躇うことなく、「人間に三食と睡眠以外に必要なものはない」と言ってたな。 話が逸れた。これから見るものとは関係のない話だ。 そちらの船長のくだらない過去とも関係ない。 ……あれは、誰か「個人」のせいじゃない。
山頂の平地は凪いでいた。 それなのに、崩壊エネルギーの渦により全員が息苦しさを感じる—— ——渦の中心にあるのは彫像などではない。 生きている。 ずっと昔から、生きているのだ。