「!!」 砂漠の中で、少女ははっと目を覚ました。

心臓がバクバクと鼓動し、服には冷や汗が滲んでいた。

少女は無意識にそばの布袋に手を伸ばし、軒轅剣を握りしめる。こうしていると、少し安心できた。

「悪い夢でも見たのかい?」 そばから聞き覚えのある声がした。 彼女は言葉をかけてくれた羅刹人の方に顔を向ける。 本当に不思議だ。知り合ったばかりの頃は、彼の神州語はさほど流暢ではなく、おかしな西域訛りがあった。しかし、まだ二日も経っていないというのに、彼は現地の人とほぼ同じくらいに言葉を話せるようになっていた。 「……ううん、大丈夫。」 羅刹人は肩を竦めて視線を逸らすと、グラスを持ち上げて赤い液体を揺らし、唇をつけた。彼がグラスを置くと、赤い液体の揺れもぴたりと止まる。その液体はいつも同じような高さのままで、増えることも減ることもなかった。 それが一体何なのか、少女はいつも気になっていた。いくつか想像もしてみたが、口には出さなかった。 李素裳は起き上がる。眠気は一瞬で消えてしまった。彼女は服を整えると、再び羅刹人の横に腰を下ろし、西域の不思議な炎を見つめる。 それは、とても不思議なものだった。 見た目はただの青い球だったが、どう転がしても中の炎は動かず、光と熱を放ち続けている。 砂漠の夜は気温がかなり下がるが、二人と二頭の馬はこの球を囲っているだけで、まったく寒さを感じなかった。 (彼の奇術は、どれもすごい……) 素裳は思わず、横にいる金髪の男を見た。 「ねえ、羅刹人。」 「僕にも名前があるんだが。」 「あんたたちの名前って、変テコで覚えるのが大変じゃない。」 羅刹人は微笑んだが、答えることはなく、そばの棺に目を向けた。

彼はずっと、大きくて重そうな棺を持ち歩いている。彼は時折、棺に向かって何かを呟いていて、そのたびに素裳は不快な思いをしていた。

李素裳はしばらく待っていたが、羅刹人は何も言わなかった。 「ねえ……あんたはどうして仙人を探してるの?」 「……」

長い沈黙だった。

素裳が次の話題を探そうと考えた時、羅刹人が急に口を開いた。

「僕は仙人に会ったことがあるんだ。」 「えっ?」 少女は驚いたが、すぐに表情を元に戻す。

「あっ、またアタシを騙そうとしているの?この前、アタシに仙人って誰?って聞いたじゃない。

まったく、あんたたち羅刹人って本当のことを言わないんだね。」

「騙してないよ。でも、話せば長くなるからね。」 「大丈夫。時間ならあるし、どうせすぐには眠くならないでしょ。」 羅刹人は足下の砂や小石を見つめながら言った。 「本当に聞きたいのかい?」 「うん!だけど、難しく話さないでね。簡単に、できるだけ簡単にして。」 「分かったよ。二十年前……」 「待って、二十年前?あんた、今何歳なの?」 「……そうやって遮られたら話せないよ。」 「あっ、ごめん。続けて。」 「はぁ……」 羅刹人はため息をついた。 「二十年前、ヨーロッパ大陸と神州との間に戦争が起きたんだ。ヨーロッパの遠征軍は天命騎士団という名前で、僕もその中にいた。明帝国はとても強かった。」 「それまで、天命はそこまで強い相手と戦ったことはなかったが、[em font=Arial]Walküre[/em]と[em font=Arial]Der Schlüssel Gottes[/em]の力によって、天命は優勢で――」 「ちょっと――待って、ヴァル何たらとデル何たら?」 李素裳は不満そうに口を尖らせた。 「あんたたちの名前は変テコって言ったじゃない!イジワルしてるの!?」 「……本当にすまないね。言い慣れているものだから。」 羅刹人は申し訳なさそうに両手を広げる。 「神州の言葉で説明しよう。」 「うんうん、そうして!話を続けて、今度はもう邪魔しないから。」 「うーん……」 「えっ?」 異なる言葉への切り替えが難しかったためだろうか。羅刹人は何度か口を開こうとしたが、言葉にならないようだった。 「とにかく……うん。西洋の騎士は、君たちがいうところの、武術家みたいなものだ。」 羅刹人はようやく思考の糸口を掴んだようだ。彼は軽く手を叩き、困った表情も見せていたが、不意に微笑む。